小児眼科専門医の診療が可能です
こどもの目は大人の目を小さくしただけでなく、視機能が発達途上という特徴があります。
当院では、地域に貢献したいという理念からこどもの目を守ることは重要であると考え、九州大学病院から小児眼科を専門とする医師を招聘しております。こどもの目のことでお困りのこと、ご心配なことがあれば、ご来院ください。
診察時間(小児眼科専門医による診療・治療)
毎週木曜日 14:00〜17:00(最終受付16:30まで)
毎月第3、第4土曜日 9:00〜12:30(最終受付11:30まで)
こどもの目が心配なご家族の方へ
大学病院では、小児眼科の領域を中心に診断・治療しており、研究は近視の疫学分野で失明予防に励んでいます。
私は数多くの子供の目を診療してきましたが、いつも子供の目の無限の可能性に驚いています。
私自身も2児の母親であり、お子さんの体が心配になる気持ちはとてもよくわかります。お子様、ご家族のお気持ちに寄り添いながら、心配事が少しでも解消できる様、努めて参ります。
九州大学病院 上田瑛美
こどもの目の症状
・見えにくい
・目を細める
・目やにがでる
・シバシバする
・瞬きが多い
・涙がでる
・目を痛がる
・まぶしがる
・白目が赤い
・目をかゆがる
・目の位置がおかしい
・顔を傾けて物を見る
・目の向きがおかしい
・二重に見える
・瞼が腫れている
・瞼が赤い
・色がわからない
当院で扱うこどもの病気
・結膜炎:アレルギー性結膜炎 流行性角結膜炎(はやり目)など
・屈折異常:近視、仮性近視、乱視、遠視
・斜視:偽内斜視、内斜視、外斜視、下斜筋過動症など
・先天性鼻涙管閉塞
・睫毛内反(さかまつげ)
・心因性視力障害
・色覚異常
・発達緑内障
・未熟児網膜症
・全身疾患もしくは精神発達遅滞に伴う眼疾患
提携関連病院
九州大学病院、福岡大学病院、福岡市立こども病院など
ご相談に応じて対応させていただきます。
小児の屈折異常
私たちが見ようとするものは、角膜、水晶体で屈折し網膜に像を結びます。
小児の屈折異常は弱視の原因となることがあるため、屈折検査はとても重要です。
子供は生まれたばかりの赤ちゃんの時には明るさがわかる程度ですが、成長にともなっていろいろなものを見る(視覚刺激)で視力は発達していきます。この時期に適切に視覚刺激がないと視力は発達しません。そこで“屈折”が重要になってくる訳です。
屈折が問題ない場合を「正視」と言い、屈折異常には「近視」「遠視」「乱視」があります。
近視
近視とは、網膜の手前で像を結んでしまう状態です。遠くのものはぼやけて見えますが、近くのものははっきりと見ることが出来ます。近くのものははっきり見える(視覚刺激はある)ため、通常近視で弱視になることはありません。
軽い近視のうちは眼鏡がなくても問題はありませんが、成長に伴って近視が進んだ場合には眼鏡による矯正を行います(年齢に応じてコンタクトレンズの使用も可能です)。眼鏡が必要かどうかの目安としては、学校で黒板の字が最前列の席にしてもらってもぼやけるようであれば作った方がよいでしょう。
近視は成長に伴ってある程度進行することが多く、近視の進行を抑える確実な方法はありません。ただテレビの見過ぎ、ゲームのし過ぎ、あるいは読書のし過ぎ等は近視がより進む原因にはなりますので、過度にし過ぎない方がよいとは言えます。
遠視
遠視とは、近視の逆で網膜よりも後ろで像を結んでしまう状態です。近くのものも遠くのものもぼやけて見えます。子供は調節力が強い(ピントを合わせる能力が強い)ため、軽い遠視の場合には問題ありません。しかしある程度以上に遠視が強くなると、どこにもピントが合わない(視覚刺激がない)状態になるため、放っておくと弱視になってしまいます。
遠視による弱視の可能性がある場合には遠視の眼鏡を作成し、それをかけることで視覚を刺激し、視力の発達を促す、という治療を行います。
乱視
乱視とは、近視や遠視とは異なり、角膜の形状がきれいな球形ではなく、いびつな形状をしているために起こります。軽い乱視の場合には問題になることは少ないですが、強い乱視の場合には遠視同様に弱視になることがあるため、メガネによる治療が必要です。
以上に挙げたような屈折異常が疑われた場合には、正確な屈折度数を測るために特殊な点眼薬を用いて調節力を麻痺させた上で検査を行い、その結果必要に応じて眼鏡の処方を行います。
弱視
弱視とは、眼鏡等で屈折異常を矯正しても十分に視力が出ない状態です(つまり、近視などでいくら裸眼視力が悪くても、眼鏡等での矯正で視力がちゃんと出る場合は弱視ではありません)。弱視には原因によりいくつかの種類があり、治療法が異なります。
弱視の種類と治療
屈折性弱視
両眼とも遠視や乱視が強いために、両眼とも十分に視力が発達していない状態です。調節力麻痺の点眼後に正確な屈折検査を行い、その上で屈折度数の合った眼鏡を処方します。その眼鏡を常にかけることで視覚刺激を与え、視力の発達を促します。
不同視弱視
片方の目だけが遠視や乱視が強いために、その目の方の視力だけ十分に発達していない状態です。こちらも調節力麻痺の点眼後に正確な屈折検査を行い、屈折度数の合った眼鏡を処方するのは同様ですが、さらに視力のよい方の目を隠す(アイパッチ)ことで、弱視になっている目に視覚刺激を与え、視力の発達を促します。
形態覚遮断弱視
生まれつきまぶたが下がっている(先天性眼瞼下垂)や水晶体の濁り(先天性白内障)、その他角膜の濁り等の影響により、眼底の網膜まで十分に光が届かないために視力が十分に発達していない状態です。
まず原因となっているものの治療(手術)を行い、引き続き遠視や乱視が強いようであれば眼鏡を処方して視覚刺激を与え、視力の発達を促します。
斜視
斜視とは、片目は正面を向いていても、もう片方の目が違う方向を向いている状態です。斜視は向いている方向によりいくつか種類があります。
片方が正面を向いているときに、もう片方の目が内側に向いている状態を内斜視、逆に外側を向いている場合を外斜視と言います。その他上斜視、下斜視があります。また、常に斜視が存在する場合(恒常性斜視)と、時々斜視になる場合(間歇性斜視)があります。
斜視の原因としては、ほとんどの場合目の筋肉・神経の異常か遠視ですが、それ以外に目の病気や脳内の病気等が原因となることもあります。
斜視の治療
斜視により弱視になっている場合には、治療の第一は視力を向上させることです。これには調節力麻痺の点眼後に正確な屈折検査を行い、屈折度数の合った眼鏡を処方します。さらに視力のよい方の目を隠す(アイパッチ)ことで、弱視になっている目に視覚刺激を与え、視力の発達を促します。両眼で見えるようにプリズム眼鏡を処方することもあります。
次に、上記眼鏡の治療で斜視が治らない場合には将来的には斜視を治す手術が必要なことがあります。
ただし、目の向きが治っても両眼視(両眼でものを立体的に見る能力)が出来るようになるには弱視に対する訓練を行う必要がありますが、それでも両眼視に獲得が困難なこともあります。
先天性鼻涙管閉塞
生後まもない時期に涙道が未発達のために眼脂、流涙がみられる状態です。通常、涙道機能の回復により自然に消退しますが、改善しない場合は先天性の鼻涙管閉塞を疑う必要があります。
先天性鼻涙管閉塞の診断
目の内側、鼻の付け根あたりを圧迫すると目の中に涙が逆流してきます。粘液や黄色膿が混じっている場合もあります。これでおおよその診断は可能ですが、涙道の閉塞部位や涙嚢炎の確認も含め、診断の確定には涙道通水試験が必要です。涙嚢炎は涙嚢内に溜まった涙液に細菌などが感染して炎症を起こすもので、これが長引くと涙嚢周囲の皮膚や瞼が赤く腫れ上がった状態、涙嚢周囲炎や眼瞼および眼窩蜂窩織炎へと重症化する例もあります。
先天性鼻涙管閉塞の治療
先天鼻涙管閉塞の大半は涙嚢マッサージのみで治癒します。目の内側、鼻の付け根あたりを人差し指で奥に圧迫する要領で10回程度マッサージを行います。これを日に3、4度行います。涙嚢炎を併発している場合にはマッサージ後に抗菌薬を点眼します。これで症状が改善しない場合は通水試験および涙嚢洗浄、涙道ブジー、涙道チューブ留置術など病状に合わせて段階的に処置が行われます。
症状が改善しない場合、放っておかずに眼科を受診することが大切です。
睫毛内反(さかまつげ)
睫毛内反(しょうもうないはん)とは、まぶたの皮膚が多いことによって、まつ毛が内向きに押されて角膜(いわゆる黒目の表面)と結膜(いわゆる白目の表面)に接触している状態です。睫毛内反のほとんどは生まれつきのものです(先天睫毛内反)。鼻が低く、左右の眼の間隔が広い東アジア人では、もともとまぶたの内側の皮膚が多いので、乳児期には内側の下まぶたによく観察されます。乳児期にはまつ毛が細く弱いので、睫毛内反があっても、角膜や結膜に重篤な症状を起こすお子さんは少なく、顔面の成長とともに自然によくなることがほとんどです。しかし、日本人では先天睫毛内反の数%の人は自然治癒せず大人になるまで持ち越すといわれています。まつ毛が太くなってきた幼児期には、角膜と結膜の表面にびらんが生じ、長期間持続すれば、角膜が混濁したり、乱視をきたしたりします。
睫毛内反(さかまつげ)の治療
睫毛内反の程度と、角膜の状態で治療が選択されます。幼少期で軽症なら、自然治癒を期待して経過観察が選択されます。それに対して、角膜びらんがひどい時やまぶしい、痛いなどの症状が強い時には、手術治療が行われます。
また、強い乱視があり、視力の発達が遅れてしまう危険がある時(屈折異常弱視)には、眼鏡をかける必要があります。まぶたの異常は見た目の問題だけでなく、視力にも関係しますので、手術の有無にかかわらず、眼科医による経過観察が必要です。
心因性視覚障害
心的ストレスが原因で視力が出なくなることを心因性視覚障害といいます。視力障害だけでなく、視野障害や色覚異常、眼位異常などもみられることがあります。小学校中高学年の女児に多く、男児の2~3倍、もしくはそれ以上といわれています。受診のきっかけは、本人が視力低下を積極的に訴えてというよりは、むしろ学校健診で視力低下を初めて指摘されたなど受動的なものの傾向があります。
心因性視覚障害の診断
診断は、特殊なテクニックを用いた視力検査法でほぼ可能となります。一種の暗示法ですが、患児を励ましながら、メガネレンズを交換しながら、最終的に度の入っていないレンズで1.0まで視力が上がったら心因性と診断できます。視野検査では水玉状に視野が欠けていたり、検査の途中でらせん状にどんどん視野が狭くなっていくことがあります。
心因性視覚障害の治療
こどもの心的ストレスの原因を取り除くことが治療になります。原因となっていることに心当たりがあれば、周囲の大人が改善することが必要です。なかなか症状が治癒しない場合は精神科のコンサルトが必要になることがありますが、こどもに精神的問題がある場合は少数にすぎません。
最後に
人間の視機能は適切な視覚刺激があって初めて発達します。視覚が発達するための感受性はおよそ8歳くらいまでに消失すると考えられています。このため弱視は適切な時期に治療を始めることが重要です。遠視や乱視による弱視の場合は、近視と違って原則常に眼鏡をかけることが必要です。そうしないと視力は発達しません。治療時期を逃さないようにすることがとても大事です。乳幼児検診や学校検診で眼科受診を指示されたら必ず受診しましょう。
また、ご両親はお子さんのことを誰よりも一番よく見ています。健診以外にも気になることがあれば早めに眼科受診することをおすすめします。